自分のプラクリティ(本質)を知る:ヴァータ体質
アーユルヴェーダは個の医学と呼べるほど、個人差を重視し、体系化しています。
それが体質(プラクリティ)ですが、体質とは、ヴァータ、ピッタ、カファの3つのドーシャのうち、どのドーシャを崩しやすいか?というものです。
基本的にプラクリティは、生来的なもので一生変化しないとされています。
これをバース・プラクリティと呼びます。
しかし、その後の生活次第では、別の体質の特徴を出す場合があり、これをボディ・プラクティと呼びます。
アーユルヴェーダの体質に関する考え方は、現代医学の遺伝学にも酷似しています。
つまり、生来的にある一定のドーシャバランスを崩しやすいということは、体質的にある一定の病気になりやすいということです。
たとえば、 ヴァータ体質は、高血圧、心臓など循環器疾患、脳血管疾患などに、ヴァータが増大して起きる疾病に、
ピッタ体質は、胃腸疾患、肝臓、胆臓、脾臓疾患など、ピッタが増大して起きる疾病に、
カファ体質は、肺器官疾患、喘息、糖尿病、肥満などカファが増大して起きる疾病に、 それぞれ生来的になりやすいと考えられています。
アーユルヴェーダでは、そのように自分のなりやすい疾病を予防しながら生活することをすすめています。
全てはバランスを取ることに尽きますが、まずは、それぞれのドーシャの特徴を見ていきたいと思います。
〜ヴァータ〜
ヴァータは、風・運動のエネルギーであり、身体を構成する五大元素では「空元素」と「風元素」からなり、軽・冷・乾・粗・動といった性質を持ちます。
いつも動いている風のように乾燥していて、不規則です。このようなイメージが根本にあります。
主に身体においては「運動」を司る役割として、運動・呼吸・排泄、神経や感覚の刺激伝達、心臓の拍動、筋肉や細胞組織の働き、そして肉体全身のバランスを制御しています。
ヴァータ体質の人は、これらのヴァータの特徴や性質が心身に強く現れます。
風が吹いてくると涼しく乾燥することから、冷えやすい、皮膚、髪、目が乾きやすい、便や腸管が乾いて便秘になりやすいという傾向があります。
ヴァータ体質の人は、好奇心旺盛で活発的、想像力豊かで芸術的・創造的な性格を持っています。 新しいことや変化にとんだ環境を好む傾向がある一方、気まぐれで飽きっぽい側面もみられます。
「ヴァータ」の基本的な性質は「変わりやすさ」です。
そのためヴァータ体質の特徴は、背丈や身長、体格、性格、言動などの傾向が型にはまりません。
極端に背の高い方もいれば低い方もおり、身体の割に手足が小さい・短い、あるいは大きい・長い、また若い頃は痩せていても中年になって著しく太ってしまうという方もいます。
睡眠や食生活のリズムが不規則になってしまう方も少なくなく、ヴァータ体質の人は生活習慣がアンバランスになりがちです。
ドーシャとは、人の身体の特徴にのみにいえるものではなく、様々な体のエリアに対応していたり、場所や時間、年齢、心の性質においても深く関わっています。
ヴァータは物事の終わりを担っています。消化の行き着く排泄を、時間は夜を、年齢は老年期を、季節は冬を。
■主に対応する体のエリア
直腸、大腸、膀胱、骨盤、骨、骨髄、耳、肌、腰、腿、膣
おへそより下、肛門までがヴァータのエリアです。胃に入ったものを消化・分解し、栄養素として吸収し、老廃物として外に出す=排泄するためには「運ぶ力」、つまり「動かすエネルギー」が必要です。
食べたものを運ぶということ自体、ヴァータがなければ起こりえないことです。
火が燃え続けられることも、川で水が流れることができることも、ヴァータの動かす力があるからこそです。水そのものに動く力はありません。
水が止まっていたら腐っていきます。ヴァータの力で流れが生まれ、新鮮であり続けられます。
そのため、自然界においても、最終的にヴァータのエネルギーを借りなければ、ピッタもカファも存在できません。
と、話がずれましたが、大腸はヴァータのエリアです。ヴァータ体質の人はこのエリアが乱れやすく、乾燥しやすいため、便秘になりがちです。排泄するためには、適度な水分・油分が必要不可欠。(詳しくは食事の詳細をご覧下さい。)
■年齢
ドーシャは年齢も大きく関係します。
子どもの手は柔らかく、瑞々しいですよね。これはカファの特徴的な肌質です。
どなたでも多かれ少なかれ年を重ねるごとに、肌は乾燥し、潤いを失っていきます。
嚥下障害が出やすくなるのも、この頃です。食べ物を飲み込むという行為も、動かす力が必要になりますよね。
年を重ねるにつれ、うまく飲み込めなくなるのは、ヴァータが乱れ、うまく機能できなくなるためです。
老年期にかけてヴァータ性の疾患に掛かりやすくなります。
もともと乾燥しやすいヴァータ体質の人は、他の体質の人と比べて、肌の潤いを失いやすく外見的老化もそうですが、腰痛や指や膝など関節炎になりやすい傾向もあります。若い頃からのケアが老年期を健康に過ごすための重要な鍵となります。
■季節
ドーシャは季節とも対応します。
ヴァータは冷たく、乾燥する時期である秋から冬にバランスを崩しやすくなります。
一年の中でもこの時期は特に冷やさないことと保湿が大切です。
■時間帯
ドーシャは一日の時間の中でも現れます。
ヴァータはpm14:00-18:00、am2:00-6:00頃に活発になります。
pm14:00-18:00頃は、活動に適した時間です。人との会話、社交的活動などヴァータの社交性や機敏性を生かすのに向いています。
■食事のポイント
勧められる食事
【温かい、栄養価の高い、油分のある、汁気のある、甘味、酸味、塩味のある食物。
温めた牛乳、チーズ、ヨーグルト、熟して果汁の多いフルーツ、あるいはフルーツジュース ショウガ、コショウ、シナモン、ナツメグなど適量、玄米、肉・魚、卵など】
控えるとよい食事
【生野菜、ナス科の食べ物(ナス、トマト、ジャガイモ、ピーマン、唐辛子など)、ドライフルーツ、多量の豆類、冷たい食べ物】
・冷性の属性を持つヴァータを静めるときは、なるべく生野菜や冷たい食べ物をさけて、熱を通したり、油で炒めたりした食事をとるようにします。
・食事をとるときも慌ただしくせず、気分をリラックスさせて、ゆっくりといただくことが大切です。
・ヴァータ体質の方は食欲や消化力が不規則で弱いため、結果的に食生活全体が不規則になりがちです。そのため、一度に多く食べるのではなく、決めた時間に3〜4回軽めに摂取することが向いています。その際、食事の時間は最低2時間は空けます。
・食事を抜くこと、反対に食べ過ぎることはヴァータを乱し、病気や合併症の原因となるので気をつけます。
・ガスが溜まる、膨満感、頭や手足の重い感じ、落ち着きのなさ、無気力、排泄力の低下、便秘といった消化力が落ちているサインに注意します。これらのサインがあるときは、消化力が回復するまで食事を極力軽くします。